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遅延型フードアレルギーと
リーキーガット症候群(腸漏れ)検査

食べものと症状の関係

身体は食べたものからつくられています。

どのような症状や不調であっても、食べものがまったく関係しないということはありません。

むしろ何気ないふだんの食生活がその原因となっていることも多いのです。

かならずしもアレルギー機序による影響とは限りませんが“遅延型アレルギー”が関係しているかもしれないのです。

即時型アレルギーと遅延型アレルギー

一般的に思い浮かべる食物アレルギーはIgE抗体による「即時型」で、通常は摂取して30分以内に鼻水、咳、呼吸困難、喘息発作、蕁麻疹やかゆみ、腹痛、下痢、嘔吐などの症状がおこります(アナフィラキシーや花粉症)。

これについては保険適応で検査を受けることが可能です。

これとは別に、食物アレルギーにはIgG抗体による遅延型(数時間~数日間たってから症状が出現)といわれるタイプがあります。

すぐには症状があらわれないだけでなく、症状自体が多岐にわたるため、食べものとの関連になかなか気づくことができないのが特徴です。

即時型アレルギーで生じる症状のほかにも、いっけんアレルギーとは関連なさそうな倦怠感やメンタルの症状などはっきりしない不調を起こすこともあり、体質のせいと考えてしまうことも少なくありません。

遅延型アレルギーは食物アレルゲンとIgG抗体が免疫複合体を形成することによって起こります。

免疫複合体は組織を傷害して腸粘膜やほかの臓器の細胞に炎症をひき起こすのです。

さらに気づかずに食べ続けることでじわじわと慢性的な炎症となって、さまざまな症状を引き起こしたり、細胞の老化を早めたりすることになります。

場合によっては原因となる食べものを避けても数週間から数ヶ月間も症状が続くことがあります。

リーキーガット(腸漏れ)とは

食物アレルギーと深い関連にあるのがリーキーガット症候群(Leaky Gut Syndrome)です。

腸の状態をあらわす名称で、正式に使用されている病名ではありません。“腸管壁侵漏症候群(ちょうかんへきしんろうしょうこうぐん)”または“腸もれ”とも呼ばれています。

食べたものは腸で吸収されますが、腸は非常にたくさんの雑多な物質が通過するところなので、必要な栄養素を吸収しつつも体の中に入れてはいけないものをブロックするという特別なバリアシステムが存在します。

このバリアシステムは、腸の粘膜上皮細胞が担っており、細胞どうしはタイトジャンクションと呼ばれるゲートのようなものでぴったり接着されています。

何らかの原因でこのタイトジャンクションが緩むと、バリアシステムが破たんし、腸内にあるべきものが細胞の隙間をすり抜けて、体の中に入ってしまいます。

これがリーキーガット(腸漏れ)と呼ばれる現象です。

つまり、腸が栄養を吸収する際に、まるで目の粗いザルからもれるように、本来なら腸の粘膜を通過しない大きさのさまざまな物質、細菌やウィルス、未消化な栄養素などを吸収してしまうのです。

このような腸では過剰な免疫反応による炎症が起こるようになります。

クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患との関連も指摘されています。

また炎症が身体ぜんたいに及び慢性的に続くと、糖尿病、高脂血症、肥満など生活習慣病や、認知症などの発症や進行を促すと言われています。

近年、このように過剰な免疫反応によって起きる慢性の炎症こそが、私達の身体に起こるさまざまな病気の原因である、という説が大きな注目を集めています。

図:通常は左側のように腸粘膜の細胞同士が密着して必要なものだけを吸収するようになっています。
右側のように腸粘膜の状態が不良でリーキーガットを起こしている場合は、隙間からウィルスや細菌、毒性のある物質や未消化タンパク質などが血管内に侵入してしまいます。

遅延型フードアレルギーとリーキーガット

リーキーガットは遅延型フードアレルギーとも強い関連があります。吸収の際に取り込まれた未消化なたんぱく質は「異物」として認識され、IgG抗体と結合して免疫複合体を形成します。

この免疫複合体はすぐには排除されずに、血液循環にのって体内のさまざまな部位に蓄積し、過剰になると遅延型フードアレルギーの症状として出てくるのです。

リーキーガットの原因として良く知られているのが、小麦タンパク質であるグルテンです。

グルテンの分解物であるグリアジンが腸粘膜上皮細胞に結合すると、細胞内に信号が送られゾヌリンというたんぱく質が過剰に分泌されます。

分泌されたゾヌリンは、上皮細胞自身に改めて結合して信号を送り、その結果、タイトジャンクションを形成しているタンパク質どうしの結合がほどけてしまうのです。

リーキーガットや遅延型フードアレルギーで起こりうる症状

腹痛、下痢、便秘、腹部膨満、消化不良、原因不明の熱、筋肉痛、関節痛、胸やけ、息切れ、吐き気、抜け毛、不眠症、記憶力低下、集中力低下、不安感、疲労感、口臭、神経過敏、食欲不振、ニキビ、じんましん、喘息、アトピー性皮膚炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群など

・・・このようにひじょうに多岐にわたり影響を及ぼしていると考えられています。

当院で実施している検査

当院ではこの「遅延型フードアレルギー検査」と「リーキーガット検査」を行っております。

少量の採血により、身体にわるい影響を与えている可能性がある食品を調べることができます。

結果判明には1か月程度かかります。

遅延型フードアレルギー(食物過敏パネル)検査

乳製品、卵、肉類、シーフード、ナッツ、穀物、フルーツ、野菜・海藻、その他イーストやお茶など120項目または219項目

結果サンプル

リーキーガットの検査(腸管バリアパネル=GBPパネル)

リーキーガットの重要なマーカー(カンジダ、ゾヌリン、オクルディン、LPS)に対する抗体を測定して腸の状態をしらべる「腸管バリアパネル」という検査です。

同時に「FITパネル」という感度の高い遅延型フードアレルギーの検査をおこなうこともでき、どのような食べものの摂取を控えるのがよいかについての詳細な情報が得られます。

結果サンプル

遅延型フードアレルギー検査(FITパネル)+リーキーガット検査(GBPパネル)

FIT22 陽性率の高い22項目のみを集約したパネル、リーキーガット検査(GBPパネル)なし
  • カゼイン
  • 牛乳
  • 卵黄
  • 卵白
  • 小麦グルテン
  • 全粒小麦
  • バナナ
  • パイナップル
  • トウモロコシ
  • ジャガイモ
  • トマト
  • コーヒー
  • 大豆
  • ターメリック
  • サケ
  • 牛肉
  • アーモンド
  • ピーナッツ
  • カンジダ
  • 醸造用イースト
  • 鶏肉
  • エビ
FIT132 22項目のほか日本人にもなじみのある食品132項目、リーキーガット検査(GBPパネル)とセット
FIT176 132項目のほかスパイスなどもプラス、リーキーガット検査(GBPパネル)とセット

※FIT検査はIgG抗体と免疫複合体C3dを同時に測定しています。前述の120項目・219項目の遅延型フードアレルギー検査に比べて感度が高く偽陽性が少ないため、除去すべきターゲットが明確になります。

結果サンプル

こんな方におすすめです

  • 原因不明の体調不良に悩んでいる
  • 腹部膨満感や排便に関する症状が続いている
  • 自身のアレルギーを詳しく知りたい
  • アレルギー症状があるのに即時型アレルギー検査では原因がわからなかった
  • ベストなパフォーマンスを保ちたいアスリート
  • 体調をしっかりと整えたい
    …など

異常があった場合には?

強いアレルギー反応が出た食品は、最低2か月間食べるのをやめていただくようおすすめします。

自覚症状の軽減がみられる場合には半年間~1年間くらい摂取を控えることをおすすめします。

それまでの摂取頻度が高い食品に反応することが多いので、必然的に食生活が変わることになります。

とくに小麦・卵・乳製品などは反応が出やすく、これらを完全除去すると栄養素やカロリーが極端に減ってしまう可能性もあるので注意しなければなりません。

その人それぞれのライフスタイルも考慮しながら、最適と考えられる食生活をいっしょに考えましょう。

軽度の反応のものであっても、継続して食べない、ローテーションして食べる、などの方法をとりながら、腸内環境の改善に取り組んでいくのがよいでしょう。

リーキーガットの傾向があった場合には、腸内環境を改善し、炎症を失くしていくことが重要です。

原因となっている食べものの摂取を控えることは炎症をおさえてタイトジャンクションを修復するのに役立ちます。

腸粘膜の修復に必要な栄養素の摂取もすすめられます。

プロバイオティクスなどのサプリメントを活用するのもよいでしょう。

じゅうぶんな睡眠と適度な運動やストレスの軽減も腸内環境の改善に有用です。

最終的には、その食品を摂取しても影響を受けないような身体になることが目標です。

当院の考え方

慢性的な体調不良の原因は、アレルギーだけとは限りません。

そのほかの生活習慣やストレス、長年つちかった思考・感情も関係する場合があり、カウンセリングやその他の検査で探っていきましょう。

アレルギーがすべてではありませんが、どこから手をつけていいかわからない場合、自分に合わない食べものを知ることは、具体的に食生活を見直すきっかけになります。

※なお、日本小児アレルギー学会では、食物アレルギーのIgG抗体検査の有用性については今のところ認められておりません。制限される食品が多くなってしまうため、成長期には適さないという見解です。

 

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